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全て生徒自身の手で:作曲から編曲、練習まで【吹奏楽にかける日々・第1部⑭】

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1983年、とある公立中学校で、生徒たちの手によって学校祭のテーマ曲が作られました。作曲から編曲、そして練習まで、全てを生徒自身が手掛けたという、まさに「奇跡」と呼ぶべき教育実践です。

現代の教育現場では想像しがたいこの挑戦は、一体どのようにして実現したのでしょうか。そこには、生徒たちの無限の可能性を信じ、惜しみない支援を続けた教職員たちの「絆」がありました。今回は、昭和の時代に花開いた、感動的な物語を紐解いていきます。

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目次

1983年の挑戦、中学校のレベルを超えた「手作りのテーマ曲」

1983年の挑戦、中学校のレベルを超えた『手作りのテーマ曲』

自分たちでテーマ曲を作ろう!

「自分たちでテーマ曲を作ろう」――。そんな生徒たちの声から、学校祭のテーマ曲づくりは始まりました。まず、多くの生徒から健康で向上心あふれる歌詞が寄せられ、その中から数点が選ばれます。

次に作曲の募集が行われ、三年生の井石郁乃さん作詞作曲による「現在(いま)をはばたけ」が、全校で歌うにふさわしい愛唱歌として選ばれました。

ミキさん(当時の教え子)
「え、テーマ曲を生徒が作詞作曲するなんて、すごいですね!でも、締め切り前日に慌てて作ったって聞いて、ちょっと親近感が湧いちゃいました(笑)」

井石さんは、作詞作曲が好きだったものの、締め切り前日までなかなか筆が進まなかったと言います。それでも、自分の作品が選ばれた時の喜びはひとしおだったようです。

給食の時間に放送されたり、音楽の時間に歌われているのを耳にすると、恥ずかしさや不安を感じつつも、嬉しい気持ちに変わりはなかったと語っています。

吹奏楽部が挑んだ、前代未聞の「生徒による全パート編曲」

吹奏楽部が挑んだ、前代未聞の『生徒による全パート編曲』」

吹奏楽部が挑んだ、前代未聞の『生徒による全パート編曲』」

作詞作曲が生徒自身の手によるものならば、吹奏楽の伴奏の編曲も生徒の手で――。顧問の先生の呼びかけに、部長の荒さんとドラムス担当の朋子さんが名乗りを上げました。しかし、メロディーとピアノ伴奏しかない曲を、吹奏楽の十数個のパートに分ける作業は想像以上に困難を極めます。

サトルくん(当時の教え子)
「メロディーとピアノ伴奏だけから、全ての楽器の楽譜を作るって、プロの仕事じゃないですか?和音を合わせるのも大変そうですし…」

特に、楽器によって調が異なるため、和音を合わせる作業は非常に高度でした。最初は退屈に感じた作業も、慣れてくると「フルートにこんなメロディーを吹かせたらどうかな?」と、自分たちのアイデアを盛り込む楽しさを見出していきます。そして、すべての楽器のパートを書き込んだ「総譜(スコア)」作り、パート譜づくりが始まりました。

  • ドラムメジャー:吹奏楽部やマーチングバンドで、演奏や指揮を統括する生徒のリーダー。
  • 総譜(スコア):すべての楽器の楽譜が1枚にまとまった、指揮者が使う大きな楽譜。
  • 和声(ハーモニー):複数の音が重なり合って生まれる、美しい響きのこと。

徹夜でスコアを書き、何度も演奏を試みる中で、生徒たちは葛藤を経験します。しかし、自分たちで編曲した曲が形になり、音が出合った瞬間の「心に広がる充実感」は、何物にも代えがたい喜びだったと朋子さんは語っています。

「作曲家の人たちはみんないつもこんな気持ちなんだろうか。こんな経験はこれから先、あるかどうかわからない。大切にしたいと思います。」彼女の言葉からは、この経験が生徒たちの心に深く刻まれたことが伝わってきます。

【教職員の後ろ盾】なぜ、この「不可能な挑戦」が実現できたのか

なぜ、この『不可能な挑戦』が実現できたのか

先生たちの温かい目と、のびのびと演奏する生徒たち。「信じて任せる教育」を象徴する優しいイラスト。

生徒たちによるテーマ曲の作詞作曲、そして全パート編曲という実践は、中学校のレベルを遥かに超える高度な挑戦でした。一歩間違えれば、生徒たちは挫折し、自信を失ってしまう可能性も十分にありました。しかし、この「不可能な挑戦」は、見事に成功を収めます。その背景には、生徒たちの可能性を信じ、全面的に理解し協力する教職員たちの強力な「後ろ盾」があったからに他なりません。

ミキさん(当時の教え子)
「先生たちが生徒の力を信じてくれたからこそ、私たちも頑張れたんですね。もし反対されていたら、きっと途中で諦めていたと思います。」

教職員一同が「生徒の可能性を信じ、全面的に理解し協力する」という姿勢を貫いたことで、生徒たちは安心して最後まで走り抜けることができました。教育において「信じて任せること」の大切さを、この実践は私たちに教えてくれます。生徒たちが自らの手で何かを成し遂げる喜びを知り、その過程で得られる成長は、教職員の温かいサポートなしにはありえませんでした。

サトルくん(当時の教え子)
「現代の教育でも、生徒の自主性を尊重し、挑戦を後押しする姿勢は非常に重要だと感じます。先生方の深い理解と協力が、生徒たちの大きな成長につながったのですね。」

【教育者・加藤の視点:生徒たちの「作る喜び」と「自己肯定感」を育む教育】

  • 自分たちで作り、自分たちで演奏する「言葉的・音楽的経験」は、生徒たちの人生に計り知れない「作る喜び」と「自己肯定感」をもたらします。
  • この経験は、単なる音楽の技術習得に留まらず、困難に立ち向かい、仲間と協力し、一つのものを創り上げる過程で得られる貴重な学びです。
  • 教職員が「信じて任せる」ことで、生徒たちは自らの可能性を最大限に引き出し、未来を切り開く力を育むことができるのです。

生徒たちが自分で作り、自分で編曲し、自分たちで練習し演奏できることを知り、その中で大きな喜びを感じてくれたことでしょう。学校祭の開会式で、全校生徒の歌声と吹奏楽の伴奏でこの曲が合唱される時、彼らは何倍もの感動を味わうに違いありません。

このような「言葉的経験」を通して、生徒たちが音楽の喜びを多く味わい、豊かな人生を歩んでくれることを願っています。

次回予告

次回は、「全国音楽教育研究会での公開授業。全国の目が注がれた日」をお届けします。お楽しみに!

連載「吹奏楽にかける日々」目次へ

 

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加藤 凌

この記事を書いたのは…教職歴36年・82歳の元校長です

日々の最新トレンドから、82年の人生経験と知見を詰め込んだ「人生航海のログブック」まで、独自の視点で毎日発信しています。かつての教え子の皆様や、同世代の方々とここで再び繋がれることを楽しみにしています。

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アマチュア無線 ja3cgz

82歳、現役。目に見えない電波で世界と繋がっています

流行の話題を追う傍ら、私の本当の情熱は「アマチュア無線」にあります。昭和から令和まで、世界中の仲間と語り合ってきた軌跡と、男のロマンが詰まった無線室(シャック)へぜひ遊びに来てください。

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