2026年6月12日、政府が首都直下地震の被害を「半減以上」にするという新たな目標を閣議決定しました。そのニュースを読みながら、私は思わず手を止めました。
82年の人生を歩んできた私にとって、地震は決して遠い話ではありません。阪神・淡路大震災の映像が目に焼き付いています。東日本大震災のあの揺れと炎も、忘れることができません。そして今また、政府が「感震ブレーカーをほぼ全世帯に設置する」という方針を打ち出しました。
「ようやく、か」と思う気持ちと、「なぜ今まで放置されていたのか」という疑問が、同時に胸の中で渦巻いています。今日は、この「感震ブレーカー」という装置について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
トレみ感震ブレーカーとは何か――「通電火災」という見えない脅威


そもそも「感震ブレーカー」って何?
感震ブレーカーとは、地震の揺れを感知して自動的にブレーカーを落とし、家への電気供給を遮断する装置です。仕組みはシンプルです。震度5強以上の揺れを検知すると、自動的に電気を止める。ただ、それだけのことです。
「それだけのことで、何が変わるの?」と思われるかもしれません。ここで知っていただきたいのが、「通電火災」という現象です。
「通電火災」――避難した後に起きる火災の恐怖
地震が起きると、多くの人が慌てて家の外へ逃げます。その際、電気ストーブや電気コンロのスイッチを切る余裕はありません。倒れた本棚が電気コードを傷つけていても、気づく間もありません。そして避難が終わり、停電が解消されて電気が復旧した瞬間――傷ついたコード、倒れたままの暖房器具、散乱した燃えやすいものに電気が流れ、火災が発生するのです。これが通電火災です。


過去の大震災が示す「電気火災」の深刻さ
阪神・淡路大震災では、出火原因が特定できたものの約6割が電気火災によるものでした。東日本大震災でも、約7割が電気に起因する火災だったと報告されています。地震で亡くなった方の多くが、実は「揺れ」ではなく「火災」によって命を落としているのです。
我が家にも今すぐ導入できる、工事不要の後付けタイプやコンセントタイプの感震ブレーカーをいくつかご紹介します。大切な命を守る具体的な第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ今まで義務化されなかったのか――長年の疑問


設置率20%、半数が「知らない」という現実
私が長年、不思議でならなかったことがあります。これほど重要な装置が、なぜ各家庭のブレーカーに標準装備されていないのか、ということです。
今回の政府発表によれば、首都直下地震の対象となる1都9県における感震ブレーカーの設置率は、2024年度の時点でわずか20パーセントです。さらに驚くべきことに、東京の調査では半数の人がこの装置の「存在すら知らない」と答えたといいます。
知らなければ、設置しようとも思わない。知らなければ、命を守る手を打てない。この「知られていない」という現実こそが、最大の問題だと私は思います。
火災報知器は義務化されたのに、なぜ感震ブレーカーは?
自動車にはシートベルトが義務付けられています。新築住宅には火災報知器の設置が義務化されています。それなのに、地震大国・日本において、通電火災を防ぐ感震ブレーカーは義務化されず、普及も進まないまま放置されてきました。



これは「東京だけの問題」ではない
政府が今回打ち出した目標は、首都直下地震を念頭に置いたものです。しかし私は声を大にして言いたい。これは東京だけの問題ではありません。
能登半島地震は2024年の元日に起きました。南海トラフ地震はいつ起きてもおかしくないと言われています。日本列島のどこに住んでいても、大地震のリスクから逃れることはできません。通電火災の脅威は、東京も大阪も、地方の小さな町も、すべて同じです。



82歳の羅針盤からの提言――命に勝るものはない


まず「我が家のブレーカー」を確認することから
82年生きてきて、私が確信していることがあります。それは「命に勝るものは何もない」ということです。
防災対策は、どうしても後回しになりがちです。「いつかやろう」「うちは大丈夫だろう」という気持ちは、私にも覚えがあります。しかし大切な人を失ってからでは、遅いのです。
感震ブレーカーには、分電盤ごと交換する「分電盤タイプ」から、コンセントに差し込むだけの「簡易タイプ」まで、さまざまな種類があります。費用も数千円から数万円まで幅広く、お住まいの自治体によっては補助金が出る場合もあります。まずはお住まいの市区町村の防災担当窓口に問い合わせてみてください。
国と自治体が本気で動くべき時
今回の政府目標は、新築住宅への義務化の検討や、既存住宅への補助金拡充を含むものです。足立区のように独自の補助制度を設けている自治体もあります。国と自治体が本気で動き始めたこの機会に、私たち一人ひとりも動かなければなりません。
新築への義務化、既存住宅への補助金拡充、そして何より「知ること」から始まる普及活動。国や自治体だけに任せず、隣近所に声をかけ、家族で話し合い、地域全体で命を守る文化を育てていきましょう。
今日、あなたにお願いしたいこと
そして何より、今すぐ「我が家のブレーカーはどうなっているか」を確認してほしいのです。感震ブレーカーが付いているか、ついていないか。それを確認するだけでも、命を守る第一歩になります。
「大切な命を守る知恵」は、難しい技術でも、高価な設備でもありません。ブレーカーを見て、確認して、必要なら設置する。その小さな一歩が、あなたとあなたの大切な人の命を守ります。
📋 今すぐできる3つのステップ
- 自宅の分電盤(ブレーカーボックス)を確認し、感震ブレーカーの有無をチェックする
- お住まいの市区町村の防災担当窓口や公式サイトで補助金制度を調べる
- 家族全員で「地震が起きたらブレーカーを切る」ことを話し合い、避難ルートを確認する
参考資料
- 内閣府「首都直下地震緊急対策推進基本計画(令和8年6月12日閣議決定)」
- 消防庁「感震ブレーカー等の種類・特徴等について」
- 消防庁「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会報告書」
- 東京都足立区「感震ブレーカー設置補助事業」
- 鳥取市東消防署「知ってる?通電火災」


