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はじめての校外演奏|地域に響き渡った交流の歌声【吹奏楽にかける日々・第1部 ④】

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吹奏楽にかける日々(4)はじめての校外演奏…地域に響く交流の歌声
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結成から一年。練習に明け暮れた日々は、ついに学校の壁を越える日を迎えました。はじめての校外演奏、その舞台は近隣の小学校の体育館。
チューバや大太鼓といった大きな楽器をみんなで協力して運び、小学校へと向かう道のりは、まるで村の小さなパレードのようでした。

期待と緊張を胸に、子どもたちの新たな挑戦が始まります。

目次

学校の垣根を越えた「教育の原点」

授業を免除され、先生に見送られて校外演奏に向かう吹奏楽部員たち
先生方の英断が、子どもたちの貴重な体験を後押しした

「午後の授業は免除するから、頑張ってきなさい」。先生方のその一言は、単なる許可ではありませんでした。当時の教育現場は、まだ学歴や知識偏重の風潮が根強く残っていた時代。そんな中で、先生方が子どもたちの「体験」の価値を信じ、送り出してくれたことの意味は、非常に大きかったのです。

新聞記事にも「昼食を食べると午後の授業は免除してもらって、玄関に集合した」と記録されています。これは、音楽を通して地域と交流すること、人前で表現することの重要性を、学校全体が理解していた証拠です。知識を詰め込むこと以上に大切な「生きる力」を育むという、教育の原点がそこにありました。

サトルくん(当時の教え子)
「午後の授業を免除して演奏へ……。知識を詰め込むこと以上に、表現し、交流することの価値を先生方が信じておられた証拠ですね。」

ピカピカの体育館に響く「ヤマト」と「UFO」

体育館で小学生たちが立ち上がって演奏に合わせて歌っている様子
演奏に合わせて響き渡る小学生たちの大合唱

新築されたばかりのピカピカの体育館。そこで私たちが披露したのは、当時の子どもたちのヒーローだった『宇宙戦艦ヤマト』のテーマ曲と、国民的アイドルだったピンク・レディーの『UFO』でした。イントロが始まると、客席の小学生たちが「わあっ」と身を乗り出し、ステージに合わせて大きな声で歌い始めたのです。

当時の記事には、部員の一人が「演奏が終わってホッとしたところへ、小学校の先生方が“よかったヨ。いつもよりずっと大きい声で歌ってたヨ”と言いにきてくれて、もう、フィーバーのしっぱなし」と語った感想が残っています。
演奏する側と聴く側が一体となる、一方通行ではない音楽の喜び。それは、私たちにとって初めての感動的な体験でした。

ミキさん(当時の教え子)
「小学生たちが一緒に歌ってくれたとき、指の震えが止まって、ジワーっとした感動がこみ上げてきたのを覚えてる!」

母の涙と「じょうずやったヨ」の一言

客席で我が子の演奏を見て涙を拭う母親
音楽が、親子の心を繋いだ瞬間だった

その日の演奏会は、小学校の授業参観も兼ねていました。客席には、たくさんの保護者の姿が。その中には、部活への参加を、最後まで反対していた母親の姿もありました。
「勉強がおろそかになる」と、いつも心配していた母。しかし、その日ばかりは違いました。

演奏が終わり、楽器を片付けていると、母がそっと近づいてきて、たった一言、こう言ってくれたのです。「じょうずやったヨ」。当時の部員の感想文にも、こうあります。

「一年間の中で一番うれしかったぁ。それは小学校の演奏の時、お母さんに私たちの演奏をはじめて聴いてもらえたことです。だって、いつも“部をやめな”といっていたお母さんが、あの時ばかりは“じょうずやったヨ”とほめてくれたのです。

本当にうれしかった」。音楽が、家族の心を繋いでくれた、忘れられない瞬間でした。

音楽で一つになった地域

演奏後、部員と小学生、保護者が笑顔で交流する様子
音楽が世代を超え、地域を一つにした

この日の演奏会は、単なる発表の場ではありませんでした。演奏する中学生、聴き入る小学生、そして温かく見守る先生や保護者たち。音楽が、その場にいたすべての人々の心を一つにしたのです。聴いてくれる人がいて初めて音楽は完成するのだという「演奏の社会性」を、私たちは肌で感じました。

この成功体験は、大きな自信となりました。そして、その評判はあっという間に地域に広がり、「うちの子が中学に入ったら、吹奏楽部にはいりたいといっています」と、早くも“入部予約”をしてくださる保護者まで現れたのです。たった一度の校外演奏が、部の未来を大きく変えるきっかけとなりました。

【教育者・加藤の視点:響き合うコミュニティ】

地域の理解と協力があってこそ、学校教育は真に豊かなものになります。この初めての校外演奏が教えてくれたのは、演奏技術の向上以上に、音楽が持つ「人と人を繋ぐ力」の素晴らしさでした。

子どもたちが自分の住む地域に貢献し、そこで認められるという体験は、何物にも代えがたい自己肯定感を育みます。
学校という閉じた世界から一歩踏み出し、社会と繋がったこの一日は、子どもたちにとっても、そして私にとっても、教育の可能性を再確認する貴重な時間となったのです。


切り抜き速報の冊子と記事ページ

本連載の原典について

この連載は、1983〜1984年にサンケイ新聞(奈良版)に掲載された記事を元に、現代の読者へ向けて再構成したものです。

次回予告:第5回「三位一体の演奏を目指して」
(4月7日公開予定)

アコーディオンと共に

筆者:加藤 凌について
36年の教員生活を経て、58歳から起業。現在は「蒼き航海・・82歳の羅針盤」編集長として、人生の知恵とトレンドを融合させた情報を発信中。
私のモットー: 「生涯現役、好奇心は羅針盤」
最近の関心事: AI活用とアコーディオン演奏
➡ 82歳の挑戦。プロフィールと「蒼き航海」への想いはこちら

【82歳、現役。電波で世界と繋がっています】
流行の話題を追う傍ら、私の本当の情熱は「アマチュア無線」にあります。昭和から令和まで、目に見えない電波で語り合ってきた記録もぜひ。
CQ~JA3CGZ アマチュア無線ブログ
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