今日テレビで観たゴッホの「アルルの跳ね橋」や「カフェ・ファン・ゴッホ」。
その鮮やかな色彩と風景から私の脳裏に蘇ったのは、中学生時代に聴いて以来、毎日口ずさんでいたビゼーの「ファランドール」の旋律でした。
私にとってビゼーは、「カルメン」と並んで特別な存在です。南仏の太陽と熱狂を詰め込んだようなこの曲は、今も私の心を捉えて離しません。
音楽との出会いと恩師・山村先生
この曲を聴くたびに思い出すのは、当時中学校で音楽を担当されていた恩師、山村先生の姿です。
先生は詩人・作詞家としてもご活躍で、県内のたくさんの小学校や中学校の校歌の作詞をされていました。後に私が生駒市内の中学校に赴任し、生駒市音楽芸術連盟の仕事をするようになってからは、連盟の会長をされていた先生と一緒に音楽文化を普及する者として、身近にご指導をいただくようになりました。
授業で聴いた「ファランドール」は衝撃的でした。「王の行進」の勇壮なテーマと、プロヴァンス太鼓が刻む速いテンポのリズム。
交互に現れる2つの主題がやがて重なり合い、圧倒的なクライマックスへと高まっていく興奮。聴くたびに今も血が騒ぐ、私にとっての特別な一曲です。
ビゼーと《アルルの女》の悲劇的な背景
「ファランドール」は、ジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が作曲した劇付随音楽《アルルの女》の第2組曲の終曲です。

ビゼーはオペラ《カルメン》で知られる天才作曲家ですが、36歳という若さでこの世を去りました。《カルメン》が世界的な大成功を収めるのを見ることなく亡くなった彼の生涯には、光と影が交錯しています。
アルフォンス・ドーデの戯曲に基づく《アルルの女》は、南仏プロヴァンスの農村を舞台にした悲劇です。
- 主人公フレデリは、アルルの闘牛場で見かけた都会の女に心を奪われる
- しかし彼女には別の恋人がいることを知り、絶望する
- 家族の勧めで幼なじみのヴィヴェットと婚約するが、アルルの女を忘れられない
- 結婚式の夜、恋敵がアルルの女と駆け落ちすることを知り、嫉妬と狂乱の末に自ら命を絶つ
この劇のために作曲された全27曲から、ビゼー自身が選んで編んだのが「第1組曲」。そして彼の死後、親友のエルネスト・ギローが編纂したのが「第2組曲」です。
華やかなお祭りの音楽である「ファランドール」ですが、劇中では主人公フレデリが精神を錯乱させていく焦燥の場面の背景で流れます。人々の歓喜と主人公の絶望という鮮やかな対比が、この曲をいっそうドラマチックにしているのです。
音楽は記憶を呼び覚ますタイムマシン
音楽とは不思議なものです。たった数小節のメロディが、聴いた当時の風景や空気の匂い、そして恩師の温かい眼差しまでをも一緒に思い出させてくれる「タイムマシン」のような力を持っています。
南仏のまぶしい太陽と、人々の熱狂を詰め込んだ「ファランドール」。
今日、改めてこの曲に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。皆様の心にも、忘れかけていた大切な情景が蘇るかもしれません。
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