今年の夏も、暑さへの備えを早めに整える季節になりました。とくに気をつけたいのは、働き続けるシニア世代の熱中症と労働災害です。
厚生労働省は、60歳以上の労働者が占める労災の割合が近年増加傾向にあると説明しています。高齢になっても働く人が増えるなか、職場だけでなく家庭でも「無理をしない仕組み」を持つことが大切です。[1]
この記事では、2026年に適用が始まった高年齢者の労災防止指針と、職場の熱中症対策をもとに、本人と家族が今日から確認したいポイントを整理します。
高齢者の労災がなぜ注目されているのか、夏の仕事や外出で何を確認すればよいのか、家族がどのように声をかければよいのかを、暮らし目線で確認できます。
高齢者の労災が「身近な問題」になってきた
人生100年時代といわれ、定年後も働く人は珍しくありません。短時間勤務、地域の見守り、警備、店舗、配送、清掃、農作業の手伝いなど、働き方はさまざまです。
一方で、年齢を重ねると暑さへの気づきが遅れたり、疲労の回復に時間がかかったりします。若いころと同じ感覚で動くと、思わぬ事故につながることがあります。
厚生労働省は、2026年4月1日から「高年齢者の労働災害防止のための指針」を適用しています。この指針は、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理などを事業者が進めるためのものです。[2]
| 確認したい点 | 暮らしの中での意味 |
|---|---|
| 段差や滑りやすい床 | 転倒を防ぐため、足元の危険を早めに取り除く |
| 休憩場所 | 暑さや疲れを我慢せず、体を冷ませる場所を持つ |
| 作業時間 | 暑い時間帯や長時間の連続作業を避ける |
| 連絡体制 | 異変が起きたとき、誰に知らせるかを決めておく |
2025年の職場熱中症は過去最多水準に
職場の熱中症は、すでに大きな社会課題になっています。
共同通信をもとにしたJapan Todayの記事では、2025年の職場における熱中症の死傷者が1,803人となり、統計開始以来の最多を更新したと報じられました。前年より546人増え、50歳以上が全体の約52%、65歳以上は278人でした。[3]
産業別では、製造業、建設業、商業、運輸業、警備業などで多く報告されています。屋外だけでなく、工場、倉庫、厨房、車内、店舗のバックヤードなども注意が必要です。
厚生労働省の熱中症予防情報サイトでは、令和8年の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を5月1日から9月30日まで実施すると案内しています。[4]
熱中症は「気合い」や「根性」で乗り切るものではありません。早めに休むこと、周囲へ知らせること、体を冷やすことが命を守る行動になります。
職場では「知らせる仕組み」と「手順」が重要に
職場の熱中症対策では、単に水分を取るだけでは不十分です。
労働安全衛生規則の改正により、熱中症のおそれがある作業について、事業者には報告体制や悪化防止の手順をあらかじめ定め、関係作業者へ周知することが求められています。[5]
対象となる目安は、WBGT28度または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上、または1日4時間を超えることが見込まれる作業です。[5]
| 職場で決めておきたいこと | 具体例 |
|---|---|
| 誰に報告するか | 責任者、同僚、現場リーダーの連絡先を共有する |
| どこで休むか | 冷房のある部屋、日陰、冷却できる場所を決める |
| どう冷やすか | 首、わき、足の付け根を冷やす準備をする |
| いつ受診するか | 意識がぼんやりする、返事がおかしい、歩けない時は迷わない |
本人が「大丈夫」と言っても、様子がいつもと違う場合は周囲が止める判断も必要です。
本人と家族が確認したい5つの備え
高齢者の熱中症対策は、職場任せにしないことが大切です。
本人、家族、職場の三者で、小さな確認を積み重ねるだけでも危険を減らせます。

第一に、出かける前に天気予報と暑さ指数を確認します。気温だけでなく湿度が高い日も危険です。
第二に、休憩を予定として先に入れます。「疲れたら休む」ではなく、「何時に休む」と決めるほうが安全です。
第三に、水分と塩分を取りやすい形で持ち歩きます。医師から水分や塩分の制限を受けている人は、自己判断を避けてください。
第四に、家族や職場への連絡方法を決めます。スマートフォンが苦手な人は、紙に連絡先を書いて財布に入れておく方法も役立ちます。
第五に、「今日はやめる」という判断を遠慮しないことです。体調不良、睡眠不足、食欲不振の日は、暑さに弱くなります。
「頑張りすぎないで」だけでは、本人には伝わりにくいことがあります。「今日は暑さ指数を見て、午前中だけにしよう」「帰ったら電話を一本ください」と、具体的に伝えるほうが行動につながります。
「まだ働ける」と「安全に働ける」は別の話
働くことは、収入だけでなく、社会とのつながりや生きがいにもなります。
だからこそ、年齢を理由に一律に遠ざけるのではなく、安全に続けるための工夫が必要です。
ただし、「昔はこれくらい平気だった」という感覚は、夏の暑さが厳しくなった今には合わない場合があります。
無理を減らすことは、弱さではありません。明日も元気に暮らすための、賢い航海術です。
よくある疑問
なります。屋外だけでなく、冷房が弱い室内、風通しの悪い倉庫、厨房、車内などでも注意が必要です。のどの渇きを感じにくいこともあるため、時間を決めて水分を取る工夫が大切です。
まずは責めずに、顔色、返事、歩き方、汗のかき方を見ます。いつもと違う様子があれば、作業を止めて涼しい場所へ移り、必要に応じて医療機関や救急相談につなげることが大切です。
短時間でも、暑さが強い日や体調が悪い日は危険があります。作業時間の長短にかかわらず、休憩場所、連絡先、水分、体を冷やす方法を先に確認しておくと安心です。
まとめ:夏の安全は「早めに止まる勇気」から
高齢になっても働ける社会は、大切な社会の力です。
しかし、働き続けるには、安全を後回しにしない仕組みが必要です。
2026年は、高年齢者の労災防止指針が適用され、職場の熱中症対策もより具体的に求められています。
本人は無理をしない合図を決め、家族は具体的に声をかけ、職場は知らせる仕組みを整える。その三つがそろうことで、夏の危険は大きく減らせます。
暑い日の仕事や外出では、「もう少し頑張る」よりも「早めに止まる」。それが、命を守り、明日へ進むための大切な判断です。


