創部2年目の夏。部員たちの住む地域で行われる「夏まつり」への出演依頼が舞い込みました。
コンクール直前の大切な時期でしたが、自分たちの音を家族や近所の方々に届ける絶好の機会です。
練習室を飛び出し、初めての野外演奏へ挑む日々を振り返ります。
楽器運搬のために中古バンを月賦で購入

吹奏楽に楽器運搬は付き物です。当時は軽自動車しか持っていなかった私は、先輩教師のワゴン車に憧れていました。
そこで、普通免許を取得し直して中古のライトエースを月賦で購入しました。
後部座席にカーペットを敷き詰めるなど、楽器への愛情を込めた愛車の改造も行いました。
サトルくん(当時の教え子)「どろんこ」の楽器係が持つ、プロの誇り

狭い車内への積み込みは重労働で、計画性と根気が必要です。
毛布でくるみ、ガタつかないよう知恵を絞ります。
しんどい仕事を進んで引き受ける楽器係の生徒たちが、泥だらけになりながらも大役を果たす「誇り」を持っていました。
団地の窓から響く拍手と「ソーラン節」

夏まつり当日の熱気。盆踊りの櫓(やぐら)の横で披露した、日本民謡メドレー。
近所のおじさんやおばさん、家族の前で緊張しながらも演奏する部員の姿がありました。
司会を務めた生徒の忘れられない照れくさい思い出も、今となっては良い経験です。
ミキさん(当時の教え子)地域に支えられ、広がっていく活動の輪

演奏後に寄せられた「楽器購入の足しに」という温かい寸志。
自分たちの演奏が誰かに喜ばれ、地域に応援されていることを肌で感じた瞬間でした。
この経験が、部員たちの視野を広げ、音楽への誇りを確かなものにしました。
音楽室にこもって技術を磨くだけが吹奏楽ではありません。
誰のために奏でるのか。地域の人々の拍手や笑顔を直接感じることで、子供たちは「表現すること」の本当の意味を学びました。
あの夜の盆踊りの櫓の下は、どのステージよりも輝いていました。
参考文献リスト
- 1983年8月23日掲載 サンケイ新聞(奈良版)連載記事「ソーラン節も披露」
- 全国の教育関係者向け情報誌『切り抜き速報 教育版』(ニホン・ミック社)特別記録簿
▶ 次回は、コンクール本番。奈良県コンクールで優勝した瞬間の感動をお届けします。


