82歳、人生という名の航海を続ける船長の加藤です。
先日の「航海記 第4回」で25年ぶりに封印を解いた30箱の段ボール。あの中から、また一つ、懐かしい宝物が見つかりました。
それは、一枚の写真と、一通の原稿用紙。どちらも、私が校長として最後の数年間を過ごした、斑鳩東小学校での思い出の品です。

今日はこの二つの資料を羅針盤に、57歳当時の自分と対話する航海へと出発します。
サトルくん(当時の教え子)一枚の写真が語る、教育の原風景
まず見ていただきたいのが、この一枚の写真です。


これは、斑鳩東小学校の図書室で、私が子どもたちに絵本を読み聞かせている様子を捉えたものです。
世界遺産・法隆寺を校区に持つこの学校は、歴史と文化の香りに包まれた、素晴らしい環境にありました。
子どもたちの真剣な眼差し、ページをめくるごとに聞こえる息をのむ音。写真を見るたびに、あの温かな空気感が昨日のことのように蘇ります。そして、この写真の記憶とぴったり重なる記述が、同時に見つかった原稿の中に残されていました。



【復刻】57歳の私が綴ったエッセイ「音楽との出合い」
その原稿とは、当時、地域情報誌「月刊奈良」からご依頼を受け、寄稿したエッセイです。
残念ながら掲載された冊子そのものはまだ見つかっていませんが、提出した際の原稿が、奇跡的にも段ボールの底から現れたのです。
57歳だった私が、教育現場の熱気の中で何を感じ、考えていたのか。四半世紀の時を超えて、当時の文章をここに復刻します。
音楽との出合い
—— 加藤 凌(斑鳩東小学校長)私が勤めている小学校でも、休み時間は校内が元気な児童の声であふれている。
運動場では、児童運動委員が行う「縄跳び教室」や「サッカー教室」に夢中になっている子どもたちの声が響き、中庭では、6年生グループのポスターセッション(調べ学習の発表会)を、ほかの学年の児童が取り巻いて熱心に聞いている。
別の校庭では、太鼓クラブの和太鼓や音楽クラブのチャンゴ(韓国の太鼓)の音が、クラブ発表会が近づき一段と熱気を帯びてきた。
図書室の絨毯のコーナーで「本の読み聞かせ」をしているのは絵本クラブの児童たちで、地域のボランティアの方も毎回本の紹介のためにかけつけて下さっている。先生方の飛び入りもあり、私も読ませてもらったことがある。
(中略)
私は大学のコーラス部ですばらしい音楽と出会い、また、人間としての大切なことを多く学ぶことができた。今の子どもたちも、学習活動や文化活動やスポーツの中で、私が学ばせてもらったような感動や体験を多く経験することにより、人としての大切なことを身につけてほしい。学校や家庭の教育力が高められる教育改革でなければならない。
※読みやすさを考慮し、一部を抜粋・編集して掲載しています。



82歳の今、改めて思うこと
このエッセイを読み返すと、少し気恥ずかしいような、それでいて誇らしいような、不思議な気持ちになります。
書かれているのは、子どもたちの活気、音楽の力、そして教育への願い。57歳の私が信じていたものは、82歳になった今も、何一つ変わっていません。
むしろ、年齢を重ね、多くの航海を経験した今だからこそ、その価値がより深く理解できるようになったと感じます。
受け継がれる「心のハーモニー」
「うたで心と心が結ばれ、協力し共に働く喜びや開けゆく未来への希望、人と人との信頼感があふれ、模倣でない真の音楽創造が存在した」
エッセイの中にあるこの一節は、私が大学時代に得た確信であり、教員生活40年間、そして現在の会社経営においても、ずっと変わらない私の羅針盤です。
音楽も、教育も、そして人生も、一人では決して成り立たない。誰かと心を合わせ、ハーモニーを奏でることで、初めて美しいメロディが生まれるのです。



まとめ:過去は未来を照らす灯台
25年の時を経て開かれた段ボール箱は、まるでタイムカプセルのようです。
そこから現れる一つひとつの記録は、単なる思い出の品ではありません。それらは、私がこれからの航海を進む上で、進むべき道を照らしてくれる灯台の光そのものです。
57歳の私が見た夢の続きを、82歳の私が今、歩んでいる。そう思うと、胸に熱いものがこみ上げてきます。
この航海日誌を読んでくださっているあなたも、ぜひ一度、ご自身の「タイムカプセル」を開けてみてはいかがでしょうか。そこにはきっと、未来のあなたを導く、温かな光が眠っているはずです。
参考文献
- 加藤凌(著)「音楽との出合い」, 月刊奈良, 寄稿原稿
- 月刊奈良 公式サイト: https://www.gekkan-nara.jp/

