先日、映画『ほどなく、お別れです』を紹介する記事を公開しましたが、今回は趣向を変え、私自身の「航海記」として、この映画と私の人生との深い関わりについてお話ししたいと思います。
実は、私は長年、葬儀という仕事に携わってきました。それは、教職を退いた後の、全く新しい人生の航路でした。「おくりびと」から「ほどなく、お別れです」へ——18年の時を超えた二つの映画が、私の人生と不思議なほど重なり合っています。
灯台守教職から葬儀の世界へ:人生の新たな航路


私が教職を退いたのは、もう20年以上も前のことです。第二の人生を考え始めた頃、妻から「実家の葬儀会社を手伝ってくれないか」と相談を受けました。正直、最初は戸惑いました。教育という「生」を育む仕事から、人の「死」に最も近い場所へ——全く逆の世界に飛び込むことに、不安がなかったわけではありません。
しかし、2003年から手伝いを始め、そこで私は「非日常」であるはずの「死」と、日常的に向き合うことになりました。それは、悲しみだけでなく、故人が生きた証、遺された家族の想い、そして命の尊厳に触れる、想像以上に深く、豊かな経験でした。
数年間は社員として全面的に関わっていましたが、自身で立ち上げた健康食品の通販事業が忙しくなるにつれ、徐々に現場を離れ、今では週に一度、事務所の留守番をする程度です。それでも、この仕事から学んだことは、私の人生の羅針盤の、決してぶれることのない基軸となっています。



名作「おくりびと」との出会いと深い共感


そんな日々の中で出会ったのが、2008年に公開された映画『おくりびと』でした。この映画を初めて観た時の衝撃は、今でも忘れられません。当時、私たちが現場で行っていた「納棺の儀」が、これほどまでに荘厳で、美しいものとして描かれていることに、胸が熱くなりました。
本木雅弘さんが演じる、あの静かで流れるような所作。それはまさに、私たちが日々大切にしていた「故人への敬意」そのものでした。映画は、納棺師という仕事への世間の偏見や、主人公の葛藤にも焦点を当てていました。
私が仕事を始めた頃も、決して誰もが理解してくれる仕事ではありませんでした。だからこそ、主人公が困難を乗り越え、自らの仕事に誇りを見出していく姿に、自分自身の経験を重ね合わせ、何度も涙したものです。
『おくりびと』は、私たちの仕事を社会に認めさせ、その尊厳を教えてくれた、まさに金字塔と言える作品です。第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、日本映画として初の快挙を成し遂げたことも、この映画の力を証明しています。



そして「ほどなく、お別れです」への期待


『おくりびと』から18年。今、新たに「葬儀」をテーマにした映画『ほどなく、お別れです』が大きな話題を呼んでいます。この映画は「納棺師」ではなく、「葬祭プランナー」という、より現代的な視点から描かれている点が興味深いですね。
『おくりびと』が「いかにして故人を美しく送るか」という”技術”と”尊厳”に焦点を当てていたとすれば、『ほどなく、お別れです』は、「故人と遺族の想いをいかに繋ぎ、最高のお別れの形を創り出すか」という”心”と”関係性”に重きを置いているように感じます。
これは、葬儀の形が多様化し、家族のあり方も変化してきた現代社会を、見事に反映していると言えるでしょう。公開から24日間で興行収入30億円を突破したという事実も、この映画が現代の日本人の心に深く刺さっていることを証明しています。
詳しい映画の解説は、こちらの記事もぜひご覧ください。



まとめ:死と向き合い続けた私の航海記


教職を退き、偶然の縁で足を踏み入れた葬儀の世界。それは、私にとって人生の羅針盤を大きく書き換える、まさに「航海」そのものでした。
『おくりびと』が過去の航路を照らす灯台だとすれば、『ほどなく、お別れです』は、これから進むべき未来の海図を示してくれるのかもしれません。まだ映画館には足を運べていませんが、近いうちに必ず鑑賞し、この航海記の新たな1ページを書き加えたいと思っています。
そして、いつか「葬儀を題材にした映画特集」という記事で、皆さんとさらに深いお話ができる日が来ることを楽しみにしています。



