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吹奏楽にかける日々(1)|苦しい練習に耐え、やっと手にする楽器本体

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入学して間もなく、吹奏楽の見学会をみんなと見に行きました。「どんな演奏かな」。私はワクワクしていました。私はピアノしか知りませんでした。彼らがピアニカと比べものにならないほど、重厚な音を奏でる。トランペット、クラリネット、そしてサキソフォン。どの音もはきはきしていて、音に力があるのです。「これに決めた!絶対、吹奏楽部に入る!」。友達みんなをさそって入部しました。

本格的な楽器を奏でる喜び。キラキラと輝く楽器。さまざまな音色とP(ピアノ)からF(フォルテ)までの自在な音の変化。ほんとうに魅力的なのです。子どもたちも、十分に感じとっているに違いありません。「カッコイイ」の一語に尽きるようです。

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新入部員に待っていた試練

しかし、新入部員を待っているのは、きびしい基本練習である。体力づくりのためのマラソン、腹筋練習、呼吸法、読譜練習……など。この時期に呼び起こされるせつなさが、いっぱいある。どんな練習に少しあきても、楽器を手にすることを目指す。初めは、やっと一つの音。そして二つ、三つと吹ける音が毎日増えてくる。

マウスピースだけの苦しい練習

「最初はマウスピース(楽器の咽喉。口につける部分)だけの練習だ。本当に苦しかったコンクールまでの練習。いつもそうだけど、続けて吹いていると口が動かなくなって辛い。練習を待っている時のように泣く。早く吹くために死にそうだった。練習は苦しいからこそ、やりがいがあるわ」(由生)

放課後はいつどんな時でも、練習の音が鳴り響いている。夏休みの練習はきびしい。ほとんどの休日が削られている。

入部からわずか100日。やっと楽器の音がまともに鳴り始めたばかりの初心者たちにとって、コンクールに向けて2曲を仕上げるという課題はあまりに高い壁だった。それでも部員たちは、一音一音を確かめるように向き合い、毎日毎日、ただひたすらに曲を磨き上げていったのである。

やっと手にする楽器本体

本格的な楽器を奏でる喜び。キラキラと輝く楽器。さまざまな音色とP(ピアノ)からF(フォルテ)までの自在な音の変化。ほんとうに魅力的なのです。子どもたちも、十分に感じとっているに違いありません。「カッコイイ」の一語に尽きるようです。

輝く楽器と、仲間との絆

楽器庫の中は、子どもたちにとっての宝物殿です。自分自身のパートナーとなる楽器を手に取り、その重みや輝きを確かめる。それは、単なる道具選びではなく、音楽家としての自覚が芽生える瞬間でもあります。仲間と共に選び、共に奏でる約束を交わす時間は、部活動における絆の原点です。

指揮棒の下に生まれる調和

朝の光の中で、あるいは夕暮れの校舎で、楽器を鳴らす。吹奏楽部の練習は、決して楽なものではない。しかし、一人ひとりの音が重なり合い、一つの音楽になったとき、子どもたちの表情は一変する。苦しかった練習の記憶は、感動という名の宝物に変わるのである。

【教育者・加藤の視点:40年の時を経て】

この連載記事は、1984年、私が吹奏楽部を指導していた頃のものです。

当時の生徒たちが口にした「苦しいけれど、やりがいがある」という言葉を読み返し、今あらためて胸が熱くなります。今の時代、子どもたちを取り巻く環境は大きく変わりました。しかし、「何か一つのことに打ち込み、苦しさを乗り越えて一つの音を作り出す」という体験の価値は、決して色あせることはありません。

指揮台に立ち、生徒一人ひとりの音と向き合ったあの日々は、私の教育者としての原点です。この連載を通して、当時の生徒たちの成長の軌跡を皆さまと共有し、今の教育現場に何か一つのヒントを投げかけられたらと願っています。

次回予告:第2回「みんなで作る…大切な平素の練習
(3月17日公開予定)

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