2026年1月、世界最大のテクノロジー見本市「CES 2026」で、業界を揺るがす新たなキーワードが登場しました。それが「フィジカルAI」です。
NVIDIAのCEOが「ChatGPTの瞬間に匹敵する」と表現したこの技術革新は、AIをスマートフォンの画面から解放し、私たちの身体に寄り添うウェアラブルデバイスへと進化させています。
特に注目されるのが、スマートグラスやAirPods Pro 3といった日常的に装着できるデバイスです。これらは単なるガジェットではなく、20〜30代のライフスタイルを劇的に変える「タイパ最強」ツールとして期待されています。
トレみ本記事では、フィジカルAIの基本的な仕組みから、CES 2026で発表された最新デバイス、そしてAirPods Pro 3のライブ翻訳機能まで、今すぐ活用できる情報を徹底解説します。
フィジカルAIとは?従来のAIとの決定的な違い

フィジカルAIは周囲の世界を認識し、推論に基づいて行動を実行するハードウェア実装型AI
フィジカルAIとは、周囲の世界を認識し、その推論に基づいて具体的な行動を実行または調整するハードウェア実装型のAIと定義されます。従来のAIがスマートフォンやパソコンの画面内に閉じ込められていたのに対し、フィジカルAIは物理的な身体を持ち、現実世界で直接活動します。
では、従来のロボットとフィジカルAIは何が違うのでしょうか。Qualcommで自動運転およびロボティクス部門のバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるAnshuman Saxena氏は、その違いを「ロボットが推論し、自律的に行動を起こし、周囲の世界と相互作用する能力」にあると指摘しています。
つまり、単に指示されたとおりに動くのではなく、状況を理解し、自ら判断して行動できる点が決定的な違いです。
トレみNVIDIAの最高経営責任者(CEO)であるJensen Huang氏は、CES 2026の基調講演で「フィジカルAIにおける”ChatGPTの瞬間”が到来した。これは、機械が現実世界を理解し、推論し、そして行動し始める時代の幕開けである」と述べました。
この発言は、2022年11月のChatGPTリリースが生成AIブームを巻き起こしたように、フィジカルAIが次の技術革新の波を引き起こすことを示唆しています。
CES 2026では、NVIDIAをはじめとするほぼ全ての企業が、フィジカルAI関連の新モデルやハードウェアを発表しました。自動運転車、人型ロボット、そしてウェアラブルデバイスまで、フィジカルAIの応用範囲は多岐にわたります。
CES 2026で注目されたスマートグラスとAIグラスの違い

スマートグラスとAIグラスは用途によって分化し始めている
CES 2026のウェアラブルデバイス分野で最も注目されたのが、「ARグラス」と「AIグラス」の分化です。これまで一括りにされていたメガネ型デバイスが、明確に異なる2つのカテゴリーに分かれ始めています。
ARグラスは主に映像コンテンツの視聴や、リッチな視覚情報の表示を目的としています。一方、AIグラスはAIアシスタントを活用するためのインターフェースとしての役割が強く、「映像を見る」のではなく「情報を活用する」ことに特化しています。
トレみEven Realities G2は、情報表示特化型AIグラスの代表例です。緑色の単色ディスプレイに、AIからの通知やスピーチの原稿などを「文字情報」としてシンプルに表示します。
日本でも昨年11月から発売されており、価格は659ドルからです。ディスプレイで見える領域が拡大し、AIが音声でナビゲートする機能や多言語の翻訳機能も搭載されています。さらにスマートリング「Even R1」と連携して、片手でのディスプレイ操作も可能です。
LLVision Leion Heyは、リアルタイム翻訳・字幕表示に特化したグラスです。相手が話している言葉をリアルタイムでレンズ上に「字幕」として表示します。AIによる多言語翻訳はもちろん、聴覚に障害がある方との会話をサポートする用途としても注目されています。
Nuance Audioは、ディスプレイを一切持たない聴覚拡張グラスです。ビームフォーミング技術を使って「前方の人の声を聞き取りやすくする」という、聴覚のサポートに特化した機能を持っています。見た目は普通の太めのメガネそのものですが、テクノロジーで人間の身体機能を自然に補う方向へ進化しています。
Qualcommで混合現実(XR)、ウェアラブル、パーソナルAI担当のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるZiad Asghar氏は、「スマートグラスはフィジカルAIの最たる例だ。スマートグラスは基本的にユーザーが常に装着し、ユーザーと同じ光景を見て、同じ音を聞くことができる。つまり、デバイスそのものが常に物理世界に深く入り込んでいる」と述べています。
AirPods Pro 3の「ライブ翻訳」機能が変える日常のタイパ

AirPods Pro 3のライブ翻訳機能は9言語に対応し、リアルタイムで音声翻訳を提供
2026年1月にリリースされたAirPods Pro 3は、フィジカルAIの民主化を象徴するデバイスです。特に注目されるのが、iOS 26.1以降で使用可能になった「ライブ翻訳」機能です。
この機能は、Apple Intelligence対応のiPhone 15 Pro以降との組み合わせで、AIによるリアルタイムの音声通訳体験を提供します。対応言語は英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、中国語、ポルトガル語、スペイン語の9言語です。
トレみ使い方は非常にシンプルです。AirPods Pro 3を装着した状態で、iPhoneの翻訳アプリを立ち上げ、「ライブ翻訳」をオンにするだけです。
実際に使用すると、ANCが元の音声を小さく下げて、翻訳の音声を聞き取りやすくしてくれます。ちょうどテレビのライブ中継時の、同時通訳の音声のようなイメージです。完全にリアルタイムとはいきませんが、言葉の壁を超えるための有用なツールとして機能します。
さらに、画面にも翻訳結果がテキスト表示されるため、相手にこれを見せてコミュニケーションをとることも可能です。対人コミュニケーションの場合、互いに対応のイヤフォンを持っていれば相互に利用できます。
ライブ翻訳機能以外にも、AirPods Pro 3は多くの進化を遂げています。ANC性能がAirPods Pro 2と比べて最大2倍、初代からは最大4倍向上しています。駆動時間も最大8時間(初代は4.5時間)に延長され、心拍数センサーも搭載されました。
加速度センサーも搭載されており、頭の動きで受話操作をすることも可能です。設定しておくと寝落ちしてしまったときに検知して、メディアを自動的に停止してくれる機能もあります。
さらに、IP57防じん・防水性能をAirPodsシリーズで初めてサポートしているため、たくさん汗をかいても安心です。ヒアリングチェック機能も搭載されており、音が聞こえにくい場合にそれを補助する機能も備えています。
ウェアラブルデバイスと連携する次世代ガジェット

スマートグラスやAIグラスと連携する次世代ウェアラブルデバイスが続々登場
AIグラスなどのメガネ型デバイスが普及するにつれ、課題となるのが「操作方法」や「入力のプライバシー」、そして「生体情報の活用」です。CES 2026では、AIグラスと組み合わせることで利便性を高める特徴的なデバイスが多数展示されました。
トレみWearphoneは、マスク型のウェアラブルデバイスです。口元を覆うことで、周囲に声を聞かれることなく通話や音声入力が可能になります。AIグラスへの音声入力は、公共の場では抵抗感があるのが現状のため、Weaphoneのようなデバイスを併用することで、プライバシーを保ちながらAIアシスタントと自然に対話する環境が整います。
AIVELA Ring Proは、指輪型の多機能デバイスです。一般的なヘルスケア計測に加え、タッチ操作やジェスチャーによるデバイスコントロール機能を備えています。AIグラスの操作において、ツル(テンプル)を触る動作や音声コマンドが煩わしい場面でも、手元の指輪でさりげなく操作を行うことができます。
Mudra Bandは、Apple Watchに取り付けて使用するバンド型デバイスです。手首の神経信号を感知するSNC(Surface Nerve Conductance)センサーを搭載しており、指を動かすだけで接続したApple機器などをジェスチャー操作できます。画面に触れることなく、指先の微細な動きだけで操作できるため、AIグラス上のインターフェースをハンズフリーで操作するためのコントローラーとして有効です。
OVOMINDは、装着者の感情状態をリアルタイムで分析・取得できるリストバンド型デバイスです。生体信号からユーザーの緊張や興奮などの感情を読み取ります。これをAIグラスと連携させれば、例えばユーザーの感情に合わせてAIが応答を変えたり、ゲーム体験を変化させたりするなど、コンテキスト(文脈)を理解した高度なインタラクションが可能になります。
フィジカルAIが実現する「タイパ最強」のライフスタイル

フィジカルAIは日常のあらゆる場面でタイムパフォーマンスを向上させる
フィジカルAIとウェアラブルデバイスの組み合わせは、20〜30代が重視する「タイパ(タイムパフォーマンス)」を劇的に向上させます。具体的にどのような場面で活用できるのでしょうか。
トレみ海外旅行での言語の壁が消えるのは、最も分かりやすいメリットです。AirPods Pro 3のライブ翻訳機能を使えば、レストランでの注文、ホテルでのチェックイン、現地の人との会話など、あらゆる場面で即座にコミュニケーションが取れます。翻訳アプリを開いて文字を入力する手間が省け、自然な会話が可能になります。
通勤・移動時間の効率化も大きなポイントです。適応型オーディオ機能により、環境に応じた音の調整が自動化されます。駅や電車で大事なアナウンスを聞き逃すことなく、音楽やポッドキャストを楽しむことができます。会話検知機能も搭載されているため、装着した状態で何か話すと自動的にANCを行ったり音量を下げてくれたりします。
健康管理の自動化も見逃せません。AirPods Pro 3の心拍数センサーやヒアリングチェック機能により、日常的に健康状態をモニタリングできます。Apple Watchと併用することで、データの精度をさらに高めることも可能です。運動時の心拍測定も、イヤフォンだけで完結します。
情報アクセスの高速化は、スマートグラスの最大の強みです。Even Realities G2のような情報表示特化型AIグラスを使えば、視界に必要な情報を表示できます。スマートフォンを取り出す必要がなく、ハンズフリーで情報を確認できるため、作業効率が大幅に向上します。
マルチタスクの実現も、フィジカルAIならではの利点です。ハンズフリーでAIアシスタントと対話しながら、別の作業を同時に進めることができます。料理をしながらレシピを確認したり、運転しながらナビゲーションを受けたりと、これまで不可能だった同時進行が可能になります。
まとめ:フィジカルAIは「未来」ではなく「今」の技術
フィジカルAIは、もはや遠い未来の話ではありません。既に実用段階に入っており、今すぐ購入して使い始めることができる技術です。
AirPods Pro 3は日本でも発売されており、ライブ翻訳機能を含む多くの先進的な機能を体験できます。Even Realities G2などのスマートグラスも、日本で購入可能です。これらのデバイスは、20〜30代のライフスタイルに最適な「タイパ最強」ツールとして、日常を大きく変える可能性を秘めています。
トレみCES 2026で示されたフィジカルAIの方向性は、「近未来的な新しいウェアラブル体験を目指すのではなく、使い慣れた道具に便利な機能をアドオンする」というものでした。技術的な大革新というよりも、デバイスが日常に馴染むための「地に足のついた進化」です。
次のステップは、自分に合ったデバイスを選び、実際に体験してみることです。フィジカルAIは、あなたの日常をより快適で効率的なものに変えてくれるでしょう。
